土壌圏生物機能学研究室

三重大学大学院生物資源学研究科 資源循環学専攻 森林資源環境学講座(教員および大学院)

三重大学生物資源学部 生命化学コース 生命圏生命化学専修(学部)


最終更新 2024年10月2日

土壌圏生物機能学研究室は「植物栄養学」と「土壌学」を基本領域とした教育研究分野です。これら二つの学問領域を融合し、両者を知ることで解決できる問題に取り組んでいます。

・植物栄養学分野の研究では,代々植物の微量元素の役割や集積,輸送に関する研究を行っております。そのため,金属分析の技術を使った研究を多く行っております。現在の水野研では,ニッケルやクロムなどの重金属を含み,特殊な植生が形成されることで知られる蛇紋岩土壌の植生について,土壌解析と植物の金属分析をおこなっております。

2024年の研究テーマ

植物標本を使った植物の金属集積に関するデータベースの構築

 現在,蛍光X線分析計(XRF)という装置を用いることで,植物標本に含まれる元素の濃度を非破壊的に測定することが可能となりました。この技術を応用し,現在各地の博物館等から植物の標本を借り受け,植物の科や属ごとの金属集積測定,植物の必須元素の最大値や最小値の探索,特定の金属を集積する植物の探索と研究への応用などを進めています。

・鳥羽市菅島の国産ハーブ(イブキジャコウソウ)を使った荒地緑化技術の開発

三重県鳥羽市菅島はその半分が蛇紋岩というマグネシウムやニッケルが多い特殊な岩石に覆われています。約100年にわたる採石事業の結果,菅島の西側は採石により荒地となっていますが,その特殊な土壌成分のため緑化が困難な状況です。

研究室では菅島に自生する植物の化学分析を実施し,そのなかで高いニッケル耐性を持ち,荒れ地でも旺盛な生育を示すイブキジャコウソウという植物に目を付けました。この植物はタイムと呼ばれるハーブの一種であり,高い芳香を有し,ハーブティーやアロマオイル生産,蜂蜜生産などに利用できます。この植物の苗を作成し,実際どのくらい荒れ地に適応できるかを現地で検証しています。

新規のマンガン超集積性植物の機能解析

上記した日本の植物標本を2,000点以上解析した結果,葉中のマンガン濃度が非常に高い植物のグループがあることが判明しています。そのうちの一つはコシアブラであり,本植物のMn集積については過去に本研究室で解析が進められています。一方,この植物とは別に,木本のある植物のグループに高いMnの集積性が認められ,日本で2例目となるマンガン超集積性植物である可能性が高いと考えています。

2024年度は本植物のMn獲得機構について,さらなる標本の解析の他,培養細胞を使った解析,また東京農業大学との共同研究で高輝度光(SPring-8など)を使った新たな手法による分析を進める予定です。


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三重大学大学院生物資源学研究科 資源循環学専攻 土壌圏生物機能学

水野 隆文 tmizuno@bio.mie-u.ac.jp